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レポート:#2  葛飾 ワークショップ/Report: Workshop #2 Katsushika
2023.03.30

レポート:#2 葛飾 ワークショップReport: Workshop #2 Katsushika

#2のフィールド:葛飾

海外に(も)ルーツをもつ人たちが、フィールドワークや映像制作を軸に、それぞれが主体的に協働する場をつくるプロジェクト、KINOミーティング。その第2弾となる ワークショップ「KINOミーティング #2 葛飾」が、2022年11月から12月にかけて、4日間(初日のみオンライン)にわたり開催されました。
一般公募を経て集まった海外に(も)ルーツをもつ参加者8名が、まちを歩き、人と出会い、そしてそれをもとに映像作品を制作。最後には外部からゲストを迎え、上映会を行いました。

#2のフィールドとなったのは葛飾区とその周辺。2022年7月に開催した#1は池袋エリアが舞台でしたが、多くの人が仕事や遊びで“訪れる”まちとして賑やかな池袋と比べると、葛飾には“生活する”まちとしての雰囲気があります。また今回は、葛飾に訪れること自体が初めてという参加者が多く集まりました。そうした環境のなかで、参加者たちがまちをどのように捉え、作品として映していくのか、そこに新しい発見を求めてワークショップはスタートしました。

DAY 1,2 自己紹介とシネマポートレイト

初日(DAY 1)は、Zoom上で全体が顔合わせ。「いま引っ越すとしたら思い出に残したい場所」の写真などを持ち寄って、定められた事前課題を織り込んだ自己紹介を実施しました。
行きつけだった本屋、夜に眺めたネオンサイン、夕暮れどきの川辺など、それぞれの個人的なエピソードを写真とともに皆で共有し合いました。

DAY 1,2 自己紹介とシネマポートレイト/

翌日(DAY 2)の朝には早速各グループごとに決められた葛飾区内の駅に集合。そこから歩きながら、最初のプログラム「シネマポートレイト」を実施しました。

「シネマポートレイト」は「探す人」「録音する人」「撮影する人」の3役をローテーションしながらまちなかを“旅”して、2分間のちいさな短編映像作品をつくるプログラムです。3人で一緒に葛飾を探索し、例えば川沿いの道や商店の看板に自分のルーツを見出すと、そこから紡がれる話を互いに聞き、録音、話す様子やまちなかをインスタントカメラで撮影します。そこで共有されたエピソードはさまざま。“下町” と “downtown” という言葉の比較から自身の留学体験を導き出したり、古びた商店から自身の生まれた中国にあった昔の習慣へと思いを馳せたり、いい天気のなかで散歩するという行為そのものから、故郷で母と一緒に歩いて話した記憶を思い起こしたり。出会ったばかりの参加者ながら、海外に(も)ルーツをもち、そしていま東京にいるということはみな同じ。互いの話題にときに新鮮さ、ときに共感の双方を覚えながら、一人ひとりが映像のもととなる素材を集めます。

DAY 1,2 自己紹介とシネマポートレイト/
DAY 1,2 自己紹介とシネマポートレイト/

夕方に拠点に戻ると、素材をどうつなぎ合わせるかを検討し、すぐに編集に取りかかります。そして、その日のうちに全作品の上映まで行うというハードスケジュールでした。

静止画に音声を重ねるという映像としてはシンプルなつくりながら、作品は参加者それぞれの記憶を呼び起す内心に強く迫った表現となり、会場にはにはもれなく大きな拍手が、そしてときには笑いが、沸き起こりました。

DAY 3,4 ムービングムービーと上映会

そこから1週間経ったDAY 3では、KINOミーティングとしても初めての試みとなる「ムービングムービー」というプログラムを実施しました。 「ムービングムービー」は、ワークショップが開催された葛飾周辺で長年生活し、海外にルーツをもつ人を協力者として迎え、「あなたがいま住んでいるまちから急に引っ越すことになったとしたら、思い出に残しておきたい場所はどこですか?」と問いかけます。そして、ワークショップ参加者たちは「インタビューをする人」「録音する人」「撮影する人」を3人で分担し、協力者にとっての思い出に残しておきたい場所を巡る“旅”を音声と写真で記録していきます。

協力者自身やその仲間が経営するお店、よく訪れる場所、好きな風景がある場所。そこに向かう道中に言葉を交わすと、このまちに来て間もない頃に落とした財布が返ってきたエピソードや、故郷で暮らした期間とこのまちで暮らした期間が同じになり、このまちも故郷として思うようになったこと。また、うまくいかないことが多くて「すいません」と「しょうがない」が口癖だったことなどが協力者たちによって語られます。それらのエピソードを通して、改めて葛飾のまちを見つめると、DAY 2とは異なる新たなまちの姿が浮かび上がります。

DAY 3,4 ムービングムービーと上映会/
DAY 3,4 ムービングムービーと上映会/

おおよそ2時間半の旅を終え、協力者と別れた参加者たちは午後に拠点に戻り、メンバーでじっくり相談しながら編集の方針を決めていきます。壁に大きなストーリーボードを貼り付け、録音した協力者のエピソードを聞き返しながら、写真や音声の組み合わせを考え、作品の構成を練ります。

そして2週間後のDAY 4は、午前に最後の編集作業を終えて、午後にゲストとともに上映会を開催しました。シネマポートレイト、ムービングムービー、そしてサプライズで、スタッフが撮影し、編集したメイキングも合わせて上映。最後には参加者一人ひとりが全体を振り返り、4日間のワークショップを終えました。

DAY 3,4 ムービングムービーと上映会/

KINOミーティングの「まち」とこれから

「KINOミーティング #2 葛飾」は、KINOミーティングのスタッフ・参加者のほとんどがあまりなじみのない場所で行われるという新しい試みでしたが、さまざまな人の協力もあり、最終的には12本の素晴らしい映像作品が生まれました。
印象的なこととしては、この4日間を通じて生まれたのはそれらの映像表現だけではなく、いろいろな会話や気づき、そしてはっきりとした輪郭をもたなくとも、これまでになかったコミュニティが生まれたこと。そうした、さまざまなルーツをもつ人たちが集まり、ともにつくることで生まれる場を、KINOミーティングでは「まち」と呼んでいきたいと思っています。

KINOミーティングはこの春から2年目の活動に入ります。引き続き、海外に(も)ルーツをもつ人たちを対象にした映像制作のワークショップを展開していきます。また、#2で制作された映像作品は、近日完成予定のKINOミーティングのウェブサイトにて公開します。
ぜひ、引き続き活動を追っていただけるととうれしいです。