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レポート:映画制作プロジェクト2024 |キックオフ/[Report] Filmmaking Project 2024: Kick-off
2025.03.25

レポート:映画制作プロジェクト2024 |キックオフ[Report] Filmmaking Project 2024: Kick-off

シネマポートレイトによる自己紹介

2024年4月13日(土)。KINOミーティングの「映画制作プロジェクト2024」の初日。欠席者とシーズンメンバーを除き、10名のメンバーがワークショップ会場に集まった。まずは自己紹介がてら、メンバーそれぞれが過去にKINOミーティングやMFMのワークショップにて制作した「シネマポートレイト」を上映する。ワークショップ参加のタイミングに応じてそれぞれの作品が制作された時期は異なり、つい半年前の新鮮な記憶として自身の作品を観るメンバーもいれば、3年ほど前の自分の語りに顔を隠して恥ずかしがるメンバーもいて、その反応に会場はちょっとした盛り上がりをみせる。「ルーツのことについて何も言っていない」とシェリーが過去の自分に突っ込む横で、「このときの自分の日本語が下手すぎて」と苦笑するカイ。自身のルーツとは異なる場所、言語環境で生活することで、たった数年、もしくは数ヶ月であっても変化は大きく現れる。

シネマポートレイトによる自己紹介/

モノローグとダイアローグ

ささやかではあるが、互いのルーツについて改めて共有したメンバーたちが次に取り組むのは、映画制作へのウォーミングアップとなるふたつのワーク。ひとつは「モノローグを共有する」。そして、もうひとつは「ダイアローグを制作する」。まず「モノローグを共有する」では、二人ひと組になり、「決断」をテーマにそれぞれの個人的なエピソードを共有する。「決断」は、これからつくる映画におけるひとつのキーワードとしてあげられた。あらすじでは、深夜、登場人物たちがそれぞれに個人的な打ち明け話をする、という設定になっているが、その打ち明け話には、きっとそれぞれの「決断」が語られるのではないか、というのがスタッフからの提案である。そして、このワークは映画の素材となるような個人的なエピソードを収集するひとつのプロセスになり得る。メンバーたちは、二人ずつ椅子を並べ、付箋を片手にそれぞれが「決断」したエピソードを共有する。

モノローグとダイアローグ/

続く「ダイアローグを制作する」では、同じペアで、共有したエピソードをもとに実際に自分たちで演じながら「会話劇」をつくりあげる。誰かのエピソードに脚色や設定を加え、リアリティのある会話に仕立てることは、脚本制作の予行練習の意味合いも含んでいる。また、会話する状況をつくるための小道具(掃除機、脚立、グローブと野球ボール、台車など)が用意され、それらを自由に使うことができる。メンバーたちは、小道具を片手にわきあいあいとそれぞれの会話を組み立てていった。

30分程度の制作の後、5つのペアによる各1、2分程度の即興劇が皆の前で披露された。結果的に課題の趣旨であった「決断」のエピソードが印象強く描かれることはほとんどなかったが、別の角度での発見をもたらす機会になった。それは、メンバーたちの間で、それぞれのキャラクターの魅力的な立たせ方がうっすらと共有されていたことである。キャッチボールをしながら大学時代の後輩であるベンカの進路相談に乗るタケル。アパレルショップのスタッフであるリュウと、そこに客として現れるニニ。オフィスで真面目にきびきびと片付けを進めるレイに、そっと声をかけるユーセフ。ユーモアのある振る舞いで笑いを誘う設営現場のシキと、対照的にクールにボソボソと話す後輩のチョウ。それぞれの決断の内容よりも、それぞれのキャラクターが前に出てきてしまう想定外の展開に苦笑しつつも、このメンバーでの映画づくりに期待は高まる。今回は俳優としてのキャラクターの表出ではあったが、おそらく脚本の制作プロセスや、撮影の現場においても同様にこれらの個性が協働する姿を期待せずにはいられない。

モノローグとダイアローグ/
モノローグとダイアローグ/

プロット制作

昼休憩を経て、午後はいよいよ本格的な映画制作に着手する。まずは、3つのシーズンをそれぞれに担当する3つの演出部を発表する。演出部は、監督、脚本を担当する部署で、各シーズンにおける中心的な役割を担うことになる。このメンバー構成は、これまでの映像制作経験や、メンバー同士の関係性、使用する第一言語などのバランスによりスタッフが設定した。3つの演出部のメンバー構成は以下となる。

・カイ、ユーセフ、リュウ
・コウタ、シェリー、ニニ、レイ
・シキ、タケル、チョウ、ベンカ、パイ

各部に分かれて、午前中に共有したそれぞれの「決断」のエピソードと、事前に設定されているあらすじを頼りにプロットを練り始める。各部ごとにテーブルで島をつくり、背後にホワイトボードを立て、脚本のアイデアやキャラクターの人物像を書き出していく。ホワイドボードに書かれたメモ書きを見ていくと、どのような経緯で日本に辿り着き、KINOミーティングのワークショップに参加することになったか、とあるメンバーの経路が辿られている。その節々には、仕事か趣味か、就職か起業か、帰国か定住かなど、定番ながらも決して無視できない大きな決断がゴロゴロと横たわっている。また、他のホワイトボードには居候する友人をうまく帰ってもらうための方策を練っているメモがあるが、まだその後の展開は読めない。またもう一つのホワイトボードでは、決断の大きさや種類について分類されており、小さな決断からエピソードを紡いでいくことを模索しているようにも見える。

終了間際に、各部の進捗を共有する。どこもまだまだこれからという感じだが、進行上、次回は春の部のDAY1までにプロットを完成した状態にしておかなければならない。立候補により、カイ、ユーセフ、リュウのグループが春の部の演出部を務め、はじめのエピソード制作に臨むことになった。

プロット制作/
プロット制作/
プロット制作/